くびの症状
くびの症状
耳鼻咽喉科では鎖骨より上から脳の下の眼・背骨以外を扱います。
頸部はリンパ節が非常に発達しており、リンパ節には病原体が体内に侵入したときに全身に広がらないようにせき止めて、体を守る働きがあります。
頸部の臓器以外が腫れた時はリンパ節の腫れである頻度が高く、リンパ疾患や悪性腫瘍の転移を念頭に置かなければなりません。
耳の前下方には耳下腺、顎の下には顎下腺が存在し、唾液を作って口腔内に送っています。耳下腺、顎下腺は通常は触れることができません。
尚、舌下腺は舌の裏側(口腔底)に存在しています。
甲状腺は、のどぼとけのやや下で蝶が羽を広げたような形状で気管の前方から左右に存在し、サイズは縦に4㎝ほどあります。甲状腺で作られる甲状腺ホルモンは、代謝に関わっており体を活発にする働きや、発汗や心臓機能を調節する働きなどがあり、小児期の成長発達にも携わっています。
甲状腺の裏にはカルシウム、骨の代謝を司る副甲状腺が左右に計4つあります。
頸部腫瘤を疑った場合、首のどこにあるのかが重要になります。
前頸部に腫瘤を認める場合甲状腺周囲の疾患を考えますが、甲状腺腫瘍は悪性腫瘍の頻度は低く、甲状腺がんのうち90%程度を占める乳頭がんはがんの中では生命予後が良いことが知られています。
甲状腺以外の頸部腫瘍は80%が腫瘍性であり、そのうちの80%程度が悪性といわれています。悪性の80%が頭頸部がんの転移といわれており、しこりを認めた際は速やかな精査が望まれます。また喫煙、飲酒は頭頸部がんのリスク因子です。
側頸部に腫瘤を認める場合は、転移性腫瘍や悪性リンパ腫、リンパ節炎、頸部嚢胞性疾患や頸動脈小体腫瘍や血管腫、神経鞘腫、線維腫、脂肪腫などが鑑別にあがります。
顎下部や耳下部に腫瘤を認める場合は、側頸部腫瘤に加えて唾液腺腫瘍や唾液腺炎、唾液腺の自己免疫疾患などが考えられます。
鎖骨上部に腫瘤を認める場合は、悪性リンパ腫や転移性腫瘍、神経鞘腫などが多いです。左鎖骨上部は胃がんのリンパ節転移の好発部であり(ウィルヒョウ転移)、注意が必要です。
前頸部に腫瘤を認める場合は、甲状腺腫瘍や甲状腺炎、正中頸嚢胞や類皮嚢胞、悪性リンパ腫、副甲状腺腫瘍などが考えられます。
唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に分類され、大唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺があります。小唾液腺は口唇や口腔内、咽頭などに分布しています。
感染性のリンパ節炎の他、自己免疫疾患や小児の川崎病、がんのリンパ節転移や悪性リンパ腫などが原因となります。
がんでは鎖骨より上の臓器が原発であることが多く、中咽頭がんや甲状腺がんのリンパ節転移では内部に液体を含みふくろ状に腫れるため、リンパ節と判断するのが難しく他の嚢胞性疾患との鑑別が重要となります。
首の腫瘍には嚢胞(袋の内部に液体が貯留したもの)を形成するものが多くみられます。
嚢胞内で感染を起こすと重篤な状態になりやすく、中咽頭がんや甲状腺がんの多くのリンパ節転移では嚢胞状リンパ節腫脹を来すことも多いため、臨床的に注意が必要です。嚢胞を評価するのにはCT検査よりエコー検査の方が得られる情報が多く適しており、当院でも行えます。
頸部痛の多くの原因は筋骨格系の異常が原因ですが、原因器官が特定できないものも多く認めます。
また、耳鼻科疾患でも頸部リンパ節炎や亜急性甲状腺炎、咽頭炎などの炎症性疾患で頸部痛は頻繁にみられます。筋肉の問題としては、スマートフォンやパソコンの長期使用や猫背などによる筋筋膜性疼痛症があげられます。骨格系の問題としては変形性関節症や脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどがあり加齢性に増加します。
頭痛は基礎疾患のない一次性頭痛と、基礎疾患がある二次性頭痛に分けられます。一次性頭痛には緊張型頭痛や片頭痛、群発頭痛などがありますが、40%以上は緊張性頭痛で、片頭痛は15%程度であるといわれています。
耳鼻咽喉科に関連して頭痛を来す疾患としては、前庭性片頭痛という片頭痛に関連しためまい疾患や、筋の緊張・肩こりに関連する頸性めまいやメニエール病、急性副鼻腔炎、鼻粘膜接点性頭痛、中耳炎などがあります。脳血管疾患や脳腫瘍など危険な頭痛も存在し、鑑別には随伴症状として麻痺や意識障害、神経所見があるか、疼痛の性状、部位が重要となります。
神経所見を認める場合や急性発症で動けなくなるような頭痛は緊急性が高く脳の精査が優先されますが、鼻症状に随伴した頭痛やめまいと連動した頭痛など心配な際はご相談ください。
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