くびの病気
くびの病気
首には多くのリンパ節が存在しています。リンパ節は口や鼻から侵入した病原体(ウイルスや細菌)に対するフィルターの役割を果たしており、炎症によって腫れて痛むことがあります。頸部リンパ節腫脹の最も多い原因は感染に伴うもので、頸部痛・急激な頸部腫脹・発熱・咽頭痛などを来します。病原体に対する治療を行い通常は数週間以内に改善します。
また、非感染性の亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)では同様の症状を来しますが頸部リンパ節の腫脹が長引く、反復することも多く、採血では感染によって上昇する白血球が減少することが特徴的です。結核、梅毒、トキソプラズマなど特殊な感染症でも頸部リンパ節炎を起こすことがあります。
感染性のリンパ節炎の他、自己免疫疾患や小児の川崎病、がんのリンパ節転移や悪性リンパ腫などが原因で頸部リンパ節腫脹を来します。
炎症性疾患が多くを占めますが、悪性リンパ腫やがんのリンパ節転移などの悪性疾患も原因の10%以上を占めています。
当院ではエコー検査にて頸部リンパ節の評価が可能ですが、悪性が疑われる際はリンパ節から組織を取っての検査や造影剤を用いた特殊なCT撮影なども必要となるため、連携病院にご紹介いたします。
甲状腺腫瘍は主に良性腫瘍、腫瘍性病変、悪性腫瘍に分類されます。特徴として良性腫瘍は数が少なく、腫瘍の多くは腫瘍性病変に分類されること、悪性腫瘍の90%程度を占める甲状腺乳頭がんは全身のがんの中で予後が非常に良いことなどがあげられます。
甲状腺のように体の表面近くにある臓器の画像検査はエコー検査が非常に有用です。エコー検査では腫瘍の有無のみでなく見た目の所見で良悪性の判断基準があり、当院でも気軽に検査が出来ますのでご心配な際は気兼ねなくご相談ください。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることが原因で、甲状腺腫大や動悸息切れ、発汗、体重減少、心不全などを来します。甲状腺機能亢進症を示す疾患には、甲状腺腫瘍が甲状腺ホルモン分泌を自律的に行うプランマー病や、橋本病の経過で甲状腺が破壊されてホルモン値の上がる無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎などがあり、採血やエコー等の画像検査で鑑別、診断をつけます。
抗甲状腺薬で治療を行い、コントロール良好な場合は生活の制限も不要ですが、再発率も50%以上と高く、手術や放射線ヨード内服療法などが行われることもあります。
甲状腺の自己免疫疾患(自分の免疫力で自分自身を攻撃してしまう病気)で中年女性に多いです。経過で甲状腺機能亢進症状を来すこともありますが、長い時間をかけて甲状腺機能が徐々に下がっていきます。甲状腺機能が低下すると疲れやすい、嗄声、浮腫み、脱毛、記憶力低下、徐脈などの症状がみられます。
また、悪性リンパ腫や他臓器の自己免疫疾患、アジソン病などの合併も知られています。採血で甲状腺機能のみだれや甲状腺抗体の検査が出来る他、エコーで特徴的な所見や悪性リンパ腫の合併を検査します。甲状腺ホルモンが低下している場合はホルモン補充療法を行います。
中年女性に好発する、甲状腺のウイルス感染症と考えられています。発熱や甲状腺の疼痛圧痛、硬化、一時的な甲状腺機能亢進による動悸・息切れ・体重減少といった症状を来します。首の痛みや、採血で甲状腺機能亢進を示す場合は疑いますが、エコーで特徴的な所見を示します。
治療において大切なことは安静にすることで、肉体労働や運動は控えましょう。鎮痛剤や、場合によってはステロイドホルモン剤の投与も行います。予後は良好です。
首に存在する臓器(唾液腺や甲状腺、副甲状腺など)に出来る腫瘍やリンパ節腫脹、皮下に出来る腫瘍などは一見して鑑別がつかないことが多く、画像検査が推奨されることが多いです。当院でもエコーでの精査が可能です。
唾液腺に出来る腫瘍は、ワルチン腫瘍や多型腺腫といった良性腫瘍や、がんなどがあります。甲状腺腫瘍は前述のとおりです。皮下腫瘤は粉瘤や脂肪腫、尋常性疣贅などがあります。その他の頸部腫瘤には側頸嚢胞や正中頸嚢胞、血管腫、神経鞘腫、リンパ管奇形などがあります。
唾液を作り分泌する唾液腺に生じる結石で80%以上は顎下腺に発生します。
食事の際にあごや舌の裏の腫れ、痛みが出ます。唾石は自然に排出することもありますが、サイズが大きいものや慢性の経過で感染を伴うと膿瘍を形成して、手術や入院治療が必要な重篤な状態に移行することもあります。
感染を合併した場合は抗生剤で治療をします。手術は唾液の出来た場所によって口の中から切開して取れる場合もありますが、首の皮膚を切って唾液腺ごと摘出する場合もあります。
食事の際に首が腫れたり、痛みを感じる場合は当疾患を疑います。
耳の前下方に分布する耳下腺の炎症で首の腫れや痛みが出ます。急性の炎症としては細菌性やウイルス性が多く、小児ではムンプス感染症(おたふくかぜ)が多いです。高齢者では細菌による急性化膿性耳下腺炎が多く、糖尿病など免疫低下を来す病気の既往がある方は、重症化して膿瘍を形成し、切開術を要するリスクが高いです。また、唾石症や唾液腺腫瘍に伴って発症することもあります。
慢性の炎症としてはシェーグレン症候群やミクリッツ病といった自己免疫疾患が原因として多いです。原因によって治療方針が異なり、慢性の経過のものは画像検査や組織を採取する検査といった精密検査が必要となる場合があります。
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