2024年11月21日
今回はお子さんにもみられるめまい疾患に関してです。
小児にもめまいを来たす病気がありますが、頻度は成人の100分の1程度といわれています。その中でも、7歳未満では良性発作性めまい症が、7歳以上では前庭性片頭痛が最も多く、どちらも家族性に発症するリスクがあります。思春期になると起立性調節障害が多くなり、軽症例を含めると約10%の有病率と言われています。その他のめまい疾患としては、外傷などが原因の前庭障害、心因性めまいなども考えられます。背景にストレスが関与していることが多いですが、多くの場合は成長とともに改善し予後は良好です。
良性発作性めまい症(BPV:Benign paroxysmal vertigo)
2-4歳が好発年齢で、発作性・反復性のめまい疾患です。健常な子どもに前ぶれなく発症し、数時間以内に自然軽快するめまい発作を反復します。発作時には嘔吐や顔面蒼白、倒れる・上手に歩けないなどの失調症状をきたすことがあり、ご家族の方が発作を見たときは驚くこともあるかと思います。意識消失はきたさず、発作が起きていないタイミングでは脳神経が障害される所見は認めません。お子さんはめまいを上手に表現することが難しく、受診される際は非発作時で健康な状態であることが多いため診断が難しい疾患の一つです。一般的には自然軽快しますが、成長とともに片頭痛に移行することがあります。また、ご家族が片頭痛持ちのことが多いです。
前庭性片頭痛(VM:vestibular migraine)
片頭痛性めまいともいわれ、成人でも認めることがありますが、7歳以上の小児のめまい疾患では最も多くを占めています。
片頭痛を有する方がめまい発作を反復する場合に診断され、めまいと同時に頭痛や光・音への感覚過敏、視野の一部がキラキラと光って、全体的に暗く感じ見えにくくなる閃輝暗点といった症状などを来たします。
片頭痛は家族性がある他、ストレスが原因で発症することも知られており、治療では原因となるストレス回避も重要です。また、片頭痛発作時の鎮痛薬以外にも、予防薬やリハビリテーション、生活習慣の改善といった様々なアプローチで治療します。片頭痛予防薬はお子さんに適応のある薬もあり、発作回数や発作時の持続時間短縮目的で連日内服します。
※片頭痛
片頭痛は全頭痛の15%程度を占めており、頭痛を来たす疾患としては筋緊張型頭痛(40~50%)に次いで多いです。刺激により、顔面周囲の感覚を主に司る三叉神経が興奮することで、頭の血管に神経原生の炎症がおこったり、痛みを感じる硬膜や脳の血管が拡張したりすることで発症すると考えられています。若年の方では、片頭痛に伴ってめまいを来たすことも多いですが、その際は頭痛が先行するといった特徴があります。また、メニエール病や良性発作性頭位めまい症といった他のめまい疾患の合併も多いことが知られています。
起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)
思春期前後の子どもに多くみられ、起立時にめまいや動悸、失神などを来たします。立ち上がる際には血液が重力で脳に届きにくくなるため、自律神経が血流のバランスを調節しています。自立神経に乱れがあると脳の血流が不足して様々な症状を来たします。
問診からある程度推測が可能で、立ちくらみやめまいがあること・起立時に気分不良や失神を来たすこと・入浴やストレスで気分不良を来たすこと・軽い動作で動機や息切れを来たすこと・早起きが苦手で午前中は調子が悪いこと・食欲不振や頭痛腹痛、乗り物酔いがあることなどの症状を来たしやすいです。横になった状態、起きた状態で血圧や脈拍を測定することで診断につながることもあります。
治療では抗自律神経薬を用いますが、特にお子さんの場合は引きこもりや不登校につながる場合があり、それによって活動量が低下することでさらに自律神経機能が低下するという悪循環に陥っている場合もあります。心理的サポートやストレスへの対応、学業支援や生活環境のサポートなど多面的な治療が必要となることも多いです。
クリニックもオープンし、多くの方に受診いただきありがたい限りです。合間で疾患コラムの方も適宜更新できたらと思います。