のどの病気
のどの病気
急性、慢性に経過するタイプがあります。
急性炎症ではウイルス性(アデノウイルスやRSウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスなど)や細菌性(溶連菌やインフルエンザ桿菌、ブドウ球菌など)が原因となります。急激に発症する咽頭痛や嚥下痛、耳痛などを来します。細菌感染とウイルス感染では見た目の所見が異なりますが、見分けがつきにくい例もみられます。細菌感染が考えられる場合は抗生剤での治療を行います。
慢性炎症ではアレルギーや口呼吸による乾燥、刺激物質(飲酒、喫煙、化学物質など)の長期暴露が原因となります。咽頭不快感や乾燥、異物感、咳、痰などの症状を来します。原因物質の回避やうがい等で患部を清潔に保つことが重要です。
咽頭炎のうち口から見える口蓋扁桃を中心とした炎症が存在するものを扁桃炎といいます。
起炎微生物は抗生剤の効かないウイルス性が小児は40-70%、成人は20-30%といわれています。抗生剤の効く細菌性の場合はA群β溶連菌が多いですがインフルエンザ桿菌やブドウ球菌なども原因となります。重症化すると扁桃周囲膿瘍、頸部膿瘍を来す可能性があります。
ウイルス性の場合は消炎剤等の治療になりますが、溶連菌感染の場合は十分な抗生剤治療をしないと遷延化するため抗生剤の推奨期間が10日~14日とされており、治療には注意が必要です。また、遷延により溶連菌感染後糸球体腎炎や扁桃病巣感染症(IgA腎症、掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成、関節リウマチ)などの全身疾患の原因となります。
当院では溶連菌感染を疑った場合は迅速にキットによる検査を行い、適正な治療薬を選択します。若年者の方では急性扁桃炎の第一選択の抗生剤に反応して皮疹を来す特殊な扁桃炎(伝染性単核球症)もあり、治療薬の選択には注意が必要です。
若年者の方は扁桃炎の重症化に伴い、高齢者の方は歯周病等の歯原性疾患が原因となることが多いです。炎症の波及に伴い扁桃の周囲に膿瘍(膿の塊)を形成し、痛みに加えて口が開かない、飲み込めない、首(頸部リンパ節)が腫れるなどの症状を来します。
抗生剤治療に加えて、基本的には針で刺してもしくは口の中を切開して膿を出す手術の適応となり、当院でも必要な場合は行います。更に重症化すると、窒息のリスクや頸部膿瘍により首の皮膚を切っての緊急手術が必要となる可能性があり、重症度に応じて入院点滴治療が推奨されます。また、再発率も10%以上と高く、罹患した場合しっかり治療を行う必要があります。
若い健康な方でも突然死するリスクのある病気です。空気の通り道と食事の通り道の境界にある喉頭蓋は炎症によりむくみやすく、炎症が起きると咽頭痛・嚥下痛・発熱から始まり、急激に呼吸困難や喘鳴を来す可能性があります。
含み声(口にものを含んで発する声)や横になると呼吸困難感が悪化するといった症状も当疾患を疑う所見です。内視鏡でのどの奥の所見をみて診断をつけますが、抗生剤やステロイドホルモン剤での治療に加えて、口から喉頭蓋を切開したり、気管切開(首を切って空気の通り道に穴をあける)といった手術や挿管(気管まで空気を通す管を挿入すること)等の手技が必要となる場合もあり、原則入院治療が推奨されます。
原因として喉頭蓋嚢胞が存在する場合もあります。
声帯ポリープは音声酷使や喫煙、感染、咳などを契機に声帯粘膜下の血管がやぶれて、血腫や浮腫が生じることで発生します。声帯の振動が妨げられることで嗄声が生じます。声帯結節は大声を使うことで好発し、就職後の女性や小学生男児に多いです。発声指導や急性期にはステロイドホルモンの内服や吸入での治療を行いますが、ステロイド吸入薬が声帯炎の原因となることもあり使用には注意が必要です。
根治治療は外科的治療になります。また、類似疾患に喫煙が原因で声帯がむくんで声が低くなったり、声がれがしたり、呼吸苦を来すこともあるポリープ様声帯があります。鑑別疾患としては声帯白斑症や喉頭乳頭腫、声門がんなどがあります。
声帯萎縮は加齢や声の不使用などにより声帯の筋肉が瘦せることで、声門閉鎖不全(発生時に左右の声帯が閉じ切らず隙間が出来てしまうこと)により大きい声や長い声が出せない、話すのがつらい、声がかれるなどの症状が出現します。ムセや誤嚥も多くなります。
同様の症状を来す疾患として声帯溝症があり、こちらは過度の発声後の瘢痕性変化、声帯嚢胞の破裂などが原因となることがあります。若年者においては社会的認識が低いため、コミュニケーション障害の原因や精神的ストレスの原因となります。また高齢者の60%が声帯萎縮を含む声帯の溝状変化を来し、空気の通り道が閉じ切らないため、進行すると誤嚥や肺炎のリスクとなります。
治療法は音声治療や声帯内注入術などがあります。音声治療はプッシング法や音声機能拡張訓練などがありますが、毎日習慣的に行うことが大切です。手術に先立ち行うことで手術を回避できたり、声帯刺激により注入術後の再生効率を高める報告もあります。
喘鳴を伴わない咳やのどの違和感を来し、原因物質としては花粉や食物(小麦、甲殻類、ソバなど)、抗生剤や鎮痛剤などの薬剤があげられます。
ホコリ・ダニなどの通年性アレルギーよりも花粉などの季節性アレルギーの方に多く見られ、スギ花粉症の50%弱はのどにも症状を生じるといわれています。
治療薬は第一選択として抗ヒスタミン薬を用いますが、当薬剤への反応性も診断基準に含まれます。症状により吸入ステロイドや漢方を併用する場合もあります。
食生活の欧米化やピロリ菌感染者の減少、高齢化などが原因で逆流性食道炎の罹患率は増加傾向にあります。胃酸が食道をこえてのどまで逆流することで、のどの違和感や咽頭痛、声がれ、咳などの症状を来します。
内視鏡で観察すると胃酸刺激により喉頭の浮腫性変化を認めます。類似の所見を認めるものとして喉頭アレルギーや甲状腺機能低下症、進行した鉄欠乏貧血などもあります。また、喉頭肉芽腫という腫瘍を形成する場合もあります。
治療はプロトンポンプ阻害薬(胃酸分泌抑制作用を有する薬剤)が第一選択ですが、診断目的もかねて行う場合があり2-8週間投与します。また、生活習慣が原因となっている場合は食事内容の改善や、大食い・早食い・食後すぐ横になる習慣の改善、飲酒喫煙を控えるなどの生活改善も重要です。
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